WIRED A.I.2015 TOKYO SINGULARITY SUMMIT #1に行ってきました
TIME TABLE
13:00 ご挨拶 若林恵(『WIRED』日本版編集長)
13:05【開会の辞】「シンギュラリティへといたる道」松田卓也(宇宙物理学者/神戸大学)
13:20「シェフ・ワトソンと創造性の未来」ラヴ・ヴァーシュニー(イリノイ大学)
14:00「A.I.社会の未来図」ベン・ゲーツェル(A.I.研究者)
14:40「Windows 10 もっと自然に、人間らしく」三上智子(日本マイクロソフト)
15:00 休憩
15:15「汎用人工知能はオープン・コミュニティから生まれるか」山川宏(ドワンゴ人工知能研究所)
15:45「人間のようなA.I.:本質的危険性と安全性」一杉裕志(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
16:15「生命科学がA.I.にもたらすもの」上田泰己(東京大学/理化学研究所)+ 一杉裕志
16:55「人工知能に“世界”を教える」武田秀樹(UBIC)
17:10 休憩
17:25「日本がA.I.先進国になるために」井上博雄(経済産業省)+ 松尾豊(東京大学)+ 服部桂(編集者/科学ジャーナリスト)
17:55「プレ・シンギュラリティの衝撃」齊藤元章(PEZY Computing/ExaScaler)
18:25「A.I.の未来についてのいくつかの回答」松田卓也 + ベン・ゲーツェル + 山川宏 + 一杉裕志 + 上田泰己 + 松尾豊 +
齊藤元章 + 若林恵
18:55 ご挨拶 若林恵
19:00 懇親会
感想
主に「汎用人工知能について、どのように実現しようとしているか」ということを様々な立場の方から語る、といった感じだった。
プロジェクトの参加募集も多く、優秀な大学生の獲得を一番の目的にしていた印象。
松尾教授の「人工知能は人間を超えるか」がおもしろかったのと、ビッグデータが話題になった時のように、リサーチの仕事に何か活かせたり影響が出る部分もあるだろうかという思いで参加したのだけれど、自分には専門的すぎたなぁというのが正直な感想。
自分の能力や関心や背景的に人工知能の開発に資するということは無さそうなので、関わるとしたら活用側だろうと思う。
感情認識能力が高まったら、GIとかを人工知能が解析するなどということもあるのだろうなぁと思いながら、自分に関してはまだまだビジネス理解と既存の手法の使いこなしでやれることの方が多いと感じたので、とりあえず静観。本を読んだり、今回興味を持ったSF的な映画を見たりは趣味の範囲でやると思います。ゲンロンカフェのチケットを実はもうとっているのだけれど、こちらはもう少しやわらかい話だとよいなぁ。
自分の仕事側をもっと進化させないと応用的なことを考えるのには足りないねというのと、同時通訳は聞きづらいので早く英語が分かるようにならなきゃねというのが反省。
カンファレンスメモ
聞き書きであくまで私のまとめだけれども、時間とか予算都合で参加できなかった学生さんなどのお役に立てば幸いです。
ご挨拶 若林恵(『WIRED』日本版編集長)
・WIREDのイベントで最も盛況。A.I.は今年注目度が急速に高まっている。
・男女比は13:7で男性が圧倒的に多い。
・松田先生が関西でやっている勉強会を東京でも!というWIRED側の思いがある中で、
経済産業省からA.Iのイベントをやりたいという相談があり実現に至った。
【開会の辞】「シンギュラリティへといたる道」松田卓也(宇宙物理学者/神戸大学)
(Siriにタイムキーパーを依頼してプレゼンテーションが開始された)
・シンギュラリティとは、ロードマップ、人工知能の分類、超知能の分類、シンギュラリティの必要性、海外の取り組み等、基礎知識を説明。
・日本の取り組みは遅れており、敗北はほぼ確定的。
・齊藤氏によるスパコン、脳チップの驚異的な開発が進んでいるが、ソフト面(Masterアルゴリズム)は引き続き問題。ぜひ若い皆さんが!
「シェフ・ワトソンと創造性の未来」ラヴ・ヴァーシュニー(イリノイ大学)
・創造とは新しい何かを生み出すこと
・創造性、新奇性、味、材料の組合せで評価した際、シェフ・ワトソンの
レシピが人間のレシピのスコアを超えた。
・組合せを作ることは今までもできたが、その中から「最も良いものを選ぶ」ということができ、それが重要。
・既存のレシピのデータ、フードケミストリー、フレーバーネットワーク、生活物理学、心理学等様々なものを活用してモデルを構築している。(ex.フレーバーネットワークを構築し、西洋料理であれば近いフレーバーを、東洋料理であれば遠いフレーバーを選ぶなど)
・A.I.の創造性に限界は(世の中にある様々なものと同様に)ある。最初は新奇性があるが、徐々に新奇性は失われていくため、新奇性を求め続けるとクオリティとのトレードオフとなる。
・人間と機械のクリエイティビティがともに働くことで、それぞれのブラインドスポットを補い、相互作用をもつことができる。
「A.I.社会の未来図」ベン・ゲーツェル(A.I.研究者)
・1970年代にはクレイジーだと思われていたA.I.の研究が、今日ではかなり身近になり注目されている。
・専門家による予測の中央値は汎用人工知能実現が2040年、超知能実現が2060年。
・技術進歩は目まぐるしく、検索知能は飛躍的に進化している。2009年、「豚(pig)の寿命は?」に対する回答はハツカネズミの寿命。2015年は検索結果の一番上に来るようになった。ただし「石は何年生きる?」では、「ロック音楽、レスラー」等々の珍解答。
・現在学会をリードしているのは特化型A.I.だが、特定の経験の結果ではなく、人間と同じように汎用に考えらえる汎用型人工知能(AGI)が必要でその研究を進めている。opencog.orgはオープンソースの開発で、A.I.界のLinaxとなることを目指している。
・考える機械(AGI)を作ることは大変だが、ロボットや車を作ることも複雑で大変。同じ大規模エンジニアリング。
・感情的な繋がりを作るロボットの研究をしている。感情的な繋がりを作れれば、人間に敵対的になるということはないのではないか。
・A.I.脅威論について、個人的には楽観視している。また、人間は未知の領域に踏み込むもの。止めることはできない。
・将来、2015年がいかに原始的な生活をしていたかを振り返るようでありたい。
「汎用人工知能はオープン・コミュニティから生まれるか」山川宏(ドワンゴ人工知能研究所)
・人工知能はディープラーニングという技術的ブレイクスルーを経て近年急速に発展。従来難しいとされていた感覚運動スキルが深層学習により実現。
・全脳アーキテクチャ・アプローチ:脳全体のアーキテクチャに学び、人間のような汎用人工知能を創る。
・なぜ脳から認知アーキテクチャを学ぶのか?
①AGIへの到達が保障されている
②知識を集約するための足場
③未解決課題のヒントが得られるー個別モジュール/組み合わせ方(カリキュラム
④分散共同開発
・A.I.のインパクトは大きいので、A.I.の専門家だけで考えることはできない。AGIはOPENコミュニティで創るのが望ましい。
・WABI
「人間のようなA.I.:本質的危険性と安全性」一杉裕志(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
・脳を模倣して人間のような知能を持つ機械(ヒト型A.I.)をつくる。脳のリバースエンジニアリング。
・脳の各機関を機械学習装置としてみなすモデルが最近うまくいっている。
これらの機関の間の連携モデルを考えることで、脳全体の機能の再現に挑戦すべき時期に来ている。
・大脳皮質:脳の様々な高次元機能(認識、意思決定、運動制御、試行、推論、言語理解など)が、たった50個程度の領野のネットワークで実現されている。領野の種類によらず、どの領野も似たような構造(コラム構造)をしており、大脳皮質の構造を理解することが必要。
・大脳皮質はdeeplearningと同じ構造を持ったベイジアンネットワーク
・予想されるヒト型A.I.:ロボットを赤ん坊のような状態から育てて常識を学習→常識的知識をコピー→個別の応用に必要な知識を獲得→市場へ
<ヒト型A.I.が人間の特徴を引き継ぐもの>
①知識発見能力・問題解決能力:ゼロ~賢い人間程度
②常識:人間と同じ環境で教育すれば身に付く
③自由意思、自己認識、創造性:人間程度
<生物学的制約がないことに起因する特徴>
①思考速度、記憶力:高
②知能の寿命:なし
③自己改変能力、自己複製能力:あり→厳しい規制が必要
<存在目的の違いに起因する>
①感情、欲求:技術者が人間の役に立つように設計
②自己保存欲求:調整可能
<コスト>
①製造コスト、ランニングコスト:将来的には人間より安い
②1個体の教育コスト:人間と同程度
③複製コスト:低い
・脳のアルゴリズムの解明(神経科学と機械学習の両方を深く理解できる人材)、計算機の低コスト化が必要
・A.I.の危険性について、短期的(十数年以内)はA.I.そのものよりも人間がA.I.を悪用するリスクのほうが大きい。
中期的危険性(十年先以降)には人間の知能を超え、利便性が増すと同時に潜在的危険性も増す。ただし、疫病、巨大隕石、巨大火山などによる人類滅亡リスクを回避する道具になり得る。人工物なので、本質的に安全になるよう、設計が可能。
長期的には人類の退化?人類絶滅後の後継者になる?人工物には、生物のようなしぶとさがないので、すぐ消滅してしまう可能性が高いだろう。A.I.が後継者としてはあてにならない以上、人間が使いこなしていくしかない。
「生命科学がA.I.にもたらすもの」上田泰己(東京大学/理化学研究所)+ 一杉裕志
・生命科学の世界において、ヒト(サル・ネズミ)の全細胞を見た人はいない。
・全部を見るということは科学の立場からすると奇異に見えるが、近隣の学問分野である物理学、天文学の分野では膨大なデータの観測から原理原則にたどり着くということが起こっている
→脳を学び脳を超える知能:全脳アーキテクチャ
・人工知能は複雑で無限と思える対象を単純・有限な要素で表現可能か?というもの。神経科学では複雑・無限な環境に単純・有限な細胞で対象にしている。生命科学側でも全脳を対象とすることが可能になってきている。
「日本がA.I.先進国になるために」井上博雄(経済産業省)+ 松尾豊(東京大学)+ 服部桂(編集者/科学ジャーナリスト)
・人工知能はいわゆる「大人の人工知能」と「子供の人工知能」に分けられる。どちらを狙うかで戦略が違うので分けて考える必要。
・大人の人工知能はビッグデータ、IOT、watoson、Siri、pepperなど。後ろで人間がすごくがんばってる。データを集めることが重要で、google・amazonの先行者利益を日本が覆すことは難しい。
・子供の人工知能は画像認識、運動能力など。ものづくりとの親和性が高い。建設・製造業・農業など。日本には世界的なシェアを取っている企業もある。
・少子高齢化という社会の中で、労働生産性高めることに人工知能が役立つ。
・ディープラーニング・強化学習というような技術はできており、各事業者がどうやって使っていくかというだけ。
・企業の方はA.I.の認識力・運動能力が上がることで自分たちのビジネスがどう変わっていくか考えてほしい。また、社内の技術者に学ばせること。外注と考える方もいるが競争力の源泉であり、外注はあり得ない。
WIRED VOL.20 (GQ JAPAN 2016年1月号増刊)/特集 A.I.(人工知能)
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長丁場だったのと椅子が固かったので疲れた。PC持ち込みは便利。
スライドの撮影は結構気になるので、スライドシェアとかあるとよいですね。