いちリサーチャーの日記

勉強の記録や自分の生活の観察、考えたことなど

【読書】フィールドワークの技法/佐藤郁哉 第4章フィールドノートをつける

フィールドワークの技法佐藤郁哉を読んでいます。

フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる

フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる

 

本の概要

文化社会学が専攻の方の本。2002年初版。暴走族・現代演劇について深く研究した方。

  • 第1章 著者が行ってきた調査の体験
  • 第2章 現場における社会調査に参加し、その中で調査を進める
  • 第3章 調査課題を明確なものにする
  • 第4章 現場観察の中でフィールドノートをとる
  • 第5章 聞き取り調査
  • 第6章 報告書(民族誌)を書き上げる

 

今回のスタンス

店舗観察の上で参考になる本を探していてであったのだけれど、マーケティングリサーチの本ではないので、第1章の途中で挫折。著者が「さし迫った事情から今すぐ特定の調査技法についてのヒントを得たいと思っている人」にも配慮してくださっていることと「本を読むより実際にやってみること」を推奨していることに甘えて、とりいそぎ第4章だけを読んで、観察に出ることにしました。

 

第4章から自分が観察する上で大事だと思ったポイント

<心構え>

  • フィールノーツをとる際には、「鳥の目と虫の目のバランス」が重要。
  • 今書いているフィールドノーツを読む未来の自分は全く別の自分。かなり時間が経過した後でも読めば情景が再生できるようにとる。
  • メモは観察後できるだけ早くとる。
  • 最終的なアウトプットが意識できるようになると、観察のポイントが絞れてくる。

<メモの取り方>

  • 人によって視覚的記憶/聴覚的記憶に得手不得手があるので、メモは苦手な方を補うように。
  • 箇条書きのノーツはやりがちだが、読み返した時に情景を思い出せない。
  • 自分の主観的な印象について書き込む場合は、その根拠となる視覚的・聴覚的情報を書き込む。
  • 日付と時間を記載する。
  • 時間順の記載を推奨する。
  • 後で思い出すために観察行為の文脈を記載する。

<鳥の目的な記述のポイント>

  1. 【見取図】空間の全体的な構造を抑える
  2. 【流れ】それぞれのエピソードの順番を記録。時間的順番と出来事の流れという全体構造のあらましを示す
  3. 【人々】登場人物の年齢や服装。その場を構成する登場人物を示す

<清書時のポイント>

  • 現場メモは下書きではなくスケッチやデッサン。見ながら目にした情景をできるだけ忠実に再現する。

<今後役に立ちそうなこと>

  • 訓練方法:いろいろな対象について実際のサイズと照合、人の集まりをざっと眺めて大体の人数を把握する。
  • 参考となる本:「方法としてのフィールドノート」

 

観察してみての感想

  • 自分は箇条書きの記述をやってしまいがち(というか本を読む前に実際にそうしていた)で、確かに今回の時系列の記述の方が出来上がったものを読んだ際に追体験しやすいなと思ったのでためになった。後から項目別に整理するにしても、一端は時系列でノートを作った方が良さそう。
  • 人物の性年代は記載していたが、ディティールの記載は忘れていた。これをしておかないと「洗練された人々」のような無根拠な記載しかしようがないので良くない。ただ同じ「フリルのブラウスとスカート」でも表せるイメージには幅があるので、状況が許されるなら写真で代替でも良いかもしれない。
  • 自分以外に向けられた会話を聞き取るのは難しい。
  • 良く聞こえなかった単語を「後で検索すればよいや」と思って疎かにしたら検索しても出てこなかったので、きちんと聞き返すようにする。
  • すぐ記載するようにしたらスムーズにできたので良かった。携帯のカメラとメモも活躍したので、(そして周囲にも携帯をいじっている人は大勢いて違和感がなかったので)スマホ社会に感謝。

 

「レポートを作るんだ」「時系列に記述するんだ」と思うと真剣に見るようになるので、単純に街を見るのと収穫量が全然違った。アウトプットは大事ですね。