いちリサーチャーの日記

勉強の記録や自分の生活の観察、考えたことなど

情報銀行について考える

秋ごろにデータ分析まわりのセミナーや説明会によく足を運んでいて、その中の一つとして「情報銀行プラットフォームを成長させるUI×基盤開発・アプリ開発×データサイエンス」に参加した。

情報銀行については、考えられることがたくさんあって、時間がある時に調べ物をしたり整理をしたりしてから書こうと思っていたのだけれど、だいぶ時間が経ってしまったので、高すぎる目標を掲げて何もしないまま忘れていくのが一番良くないなぁと思い、一旦イベントの感想と、それについて考えたことだけ記載することにした。

※本記事は、オープンにされた情報との理解で書いていますが、何か問題があったり、関係者からご指摘を受けることがあれば削除・修正を行います。

ご連絡は本記事のコメントにてお願いします。


イベントの概要

公式の説明は以下の通り。定員の約4倍参加応募があったらしい。

techplay.jp


テスト段階ということもあってか、「情報銀行ってこういうものだよ」「情報銀行はこういうものを目指しているよ」という話が多かった印象。

情報銀行については、聴講したイベントの主催者ではないが、三菱UFJ信託銀行が公開している資料がわかりやすかった。

www.tr.mufg.jp


各セッションについて

情報銀行のUIUXについて

規約をきちんと読んでもらうためのUI改善をしていて、確かにわかりやすいなと思った。このイベントの中で最も具体的実装まで進んでいる印象を受けた。

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情報銀行を加速させるためのシステム開発

外部のパートナーを積極的に活用していくという話があり、正直大丈夫かなぁ…という印象を受けた。具体的なパートナーやサービスについては社外秘ということで言及が無かった。

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情報銀行のデータサイエンス

購買情報や意識データを本人の許諾を取った上で貯めていって、そのデータを基にサジェストやプロモーションを行うことを想定しているらしい。現在EC等でされている購買データを活用したレコメンドをリアルでの購買や意識データまでデータソースを広げて行おうとしているのだろう。

本人に許諾を取った上でデータを取り、本人が一度許諾を出したデータについても、後から許諾を取り下げることができる設計にする、という話であった。

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気になった点や質疑

本人の許諾について

Q:「許諾を取り下げたデータは削除する」ということのイメージが湧かなかったのですが、①一度許諾を取って、クライアントに渡してしまったデータについては、取り下げられてから実際に使われなくなるまでタイムラグがあるのでは、②モデルに組み込んでしまったデータを取り消すことは現実的ではないのでは、と思うのですがいかがでしょうか。

A:非常に答えにくいが根本的な質問。②は実質的に不可能かと思う。①についてはどうすべきか難しい。何か期限を決めて、という形にするのがいいのかもしれない。


ビジネス設計について

Q:どういうデータをいくらくらいで販売しようとされていますか。また、売り先をFMCG系にするか、耐久消費財系にするかでどういう粒度でデータを取るかや、何年データを保有するか、データベース設計も大きく変わってくるように思いました。

また、例えば自動車に関するデータを複数の自動車メーカーに販売すれば収益性は上がりますが、競合他社も保有できる(購入しても競合と差別化できない可能性が高い)データに企業が高額を払うことは考えにくいと思いました。


A:どこをターゲットにしてビジネスをしていくかは明言できないが、FMCGなど購入頻度が多い商材の方が短期間でデータが溜まりやすいので、短期的にはそういったところを狙うかもしれない。値付けについては、どの程度の価値を産めるかというところから設計していく方法もあると思っているが、検討中。

競合他社にデータを販売しないで欲しいというリクエストはあると思っているが、「本人が許諾をしているので」という説明をしていく想定。


利用するデータについて

Q:欠損値は拡大推計など、計算で埋めることを考えていますか。

A:アンケートを取るなどして、あくまで実データをとることにこだわりたいと考えている。


考えたこと

  • 耐久消費財は、長期間のデータを保有するよりも、現在利用している各商品の購入年度(ともしかしたら型式)を一度聞いてしまえば良さそう。十年超のデータを保有するのは現実的でないように思うし、また、自分は最近冷蔵庫が壊れて買い換えたが、現在のライフスタイルや間取り、他に使っている家電の機能やCMの印象や予算、行政支援などに基づき購入商品や購入タイミングを決めたので、あまり昔のデータは購入に関係しないように感じた。反対に家族構成や住まいは変化があるごとに、ライフスタイルや価値観などの意識データは定期的に聞いても良いのかもしれない。
  • 情報銀行に対して「機能するかなぁ…」という印象を正直参加した当日は抱いてしまったのだけれど、現在の銀行も登場した当時は荒唐無稽に思われたのかもしれないから、どうすれば上手くいくのかを考えた方がおもしろいのかもなと思った。
  • 難しいのは、通貨は一物一価であるのに対して、情報は取得時点でその価値が定まっていないので、こちらで手に入れたものをあちらで運用して利息をつけるというのが通貨と比較して難しいように思った。これは市場が発達していけば収束するのだろうか。それから、金融資産は銀行等に預けることで堅牢に保管できるが、情報は無限に複製できることから堅牢に保管はできないと感じた。
  • 実データにこだわって取得していきたいというのは凄いし、実現したらおもしろそう。

 

実装の難易度がすごく高いように感じているが、構想は好きだ。

データ分析で便利/豊かにできる範囲が拡がるというのは自分にとっては望ましいことなので、定期的に注視していきたい。