いちリサーチャーの日記

勉強の記録や自分の生活の観察、考えたことなど

【読書】JMRA40年記念誌を読みました

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JMRAアニュアルカンファレンスで配られた記念誌を読みました。

なんとなく読んでみたら結構おもしろかった、という話を会社でしたら、「それを読んでいるあなたがおもしろい」という反応を頂いたので、おもしろかった部分を抜粋して紹介してみます。

章立てはこんな感じ
  1. 記念誌 発刊に寄せて
  2. マーケティング・リサーチ業界、10年の軌跡
  3. これからの10年、マーケティング・リサーチの可能性
  4. マーケティング・リサーチャーの描く未来
  5. JMRA40年史(資料)

第2章の10年の軌跡ではWEB調査の登場から興隆について、マクロミルを中心にクロスマーケティング、インテージなどの動きが書かれています。

WEB調査が出始めの頃、興味を示したのは主に広告代理店だったとか、もともとマクロミルやクロスマーケティングはパネル産業のつもりだった等が「へー」という感じでした。

私がリサーチャーになったのは既にWEB調査が主流になった後ですが、このWEB調査黎明期の話を読むと、新しい調査手法が今不完全だからといって甘く見ない方がよいなぁなどと思います。


インテージホールディングスの田下氏の
リサーチャーのリサーチャーたるゆえんは、データの発生する現場を知っていることです。与えられた環境のなかで、集める情報の最適化のためのすべを知っているので、集まる情報の可能性も限界も知ることができる。リサーチはもちろん、それ以外のデータも含めて情報の発生、収集の現場で何が起きているのかを理解し、この範囲でものが言える、ここから先は間違っているとしっかりと評価できること。統計処理は知らなくてはいけないけれども、それ以上に顧客を、世の中を、人間を知らなければそういうことはいえない。リサーチャーはあらゆるデータの価値を評価できる『情報価値鑑定士』にならなければいけないと思います」
あたりは、本当にこれができているだろうかなど、いろいろと思うところがありました。(太字は当方による。以下も同様。)


他に自分にとって興味深かったのは3章のクライアント企業によるコメント。
現在、マーケティング・リサーチに携わっている人間には大きな強みがあります。一つは、消費者に関する情報を収集する豊富なノウハウです。(中略)足らないのは、そうやって手に入れた情報を、どう見たらいいのか、なぜ消費者はそうするのかを考えるインサイト、つまり洞察力ではないでしょうか。そのインサイトをソリューションに結びつけるアイディエーションスキルも不足していると思います。この辺を根拠に調査会社を批判する発注側のリサーチ部門の人をたまに見かけますが、実は発注側のリサーチ部門に身を置いている(いた)私自身が社内の他部署から受ける批判と全く同じです。ネスレ日本株式会社 松崎氏、元ネスレ日本株式会社 桂木氏
私たちは、科学的思考とリサーチの基礎において、高い水準のスキルを有してなければならない、ということです。現在では、テクノロジーを介してさまざまな「データ」を簡単に取得できるようになっており、このスキルはますます重要性を増しています。(中略)サンプリング確率、統計的推測、データクリーニングやデータアナリティクス等、科学的スキルの価値は過小評価できるものではありません。 コカ・コーラ・ジャパン株式会社 大嶋氏
MRの機能は、「データすなわち事実に基づきビジネスに有用な知恵を抽出し、ビジネスに活用して、ビジネスに変化をもたらすこと」だと思っています。(中略)データの入り口は、ビッグデータだろうが、ニューロだろうが、なんだって良く、納品物は、ビジネスに有用な知恵が伝わってビジネスに変化をもたらすように活用されるのであれば、ワークセッションだろうが、データベース構築だろうが、クライアントの教育だろうが、これもなんだって良いのであって、極めてシンプルな話だと思います。 日産自動車株式会社 高橋氏

読み終えて思ったのは、
  • 今ある環境や手法は所与ではなく、誰かがもっと良くしようとして生まれたもの
  • 新しい手法の発見についても、クライアント領域への関わり方についても、根幹になるのは「知りたい」「売りたい」「良くしたい」という前向きな欲望
自分の仕事は「物を売る仕事」だと思っています。
専門性と冷静さを持って、明るく前向きな結論を出せる職業でありたいですね。